少し考えたけれど、ひょっとしたら私をこの家から出したくない理由があって、お兄様は両親の分の責任を背負って、という形での結婚なのかも知れない。
だけど……。

(夫婦って無理!)
「お兄様!」

私は意を決して、お兄様の部屋に飛び込んだ。

「何だ遥……」
「お兄様、普通に無理だと思います」
「何が?」
「お兄様は私と本当に結婚する気なんですか?!」
「今更何言ってんだ?」

ガン、と勢いよく立ち上がると、私の前に立つ。
そして壁際へぐいぐい追いやられてしまう。

「……男の部屋に来るって、意味わかってる?」
「……!」

顔を伏せる私の顎をクイッと掴んで持ち上げる。
目の前には、嫌でもお兄様の顔がくる。


「やっぱ違うと思う……」

そりゃ端正な顔で見つめられると、心臓がドキッとなってしまう。
だけど私にとって、彼はあくまで兄なのだ。
私に対して妙に厳しい、兄なのだ。


「結婚するまで兄で居ろ、と言ったのは誰だ?」