「これは……?」
「特注で作らせてもらったんだ。ハルジオンみたいな小さな花がモチーフになっている」

一度外して見ようとしたが、お兄様が更に何かごそごそと動き始めた。

そして懐から取り出したのは──指輪だった。
金の綺麗な模様が掘られ、大きなダイヤが輝く指輪だ。


「これは北大路家に伝わる指輪だ。ようやく一昨日、直しが終わった所だった。遥の心の準備ができたら、この指輪を渡してちゃんとプロポーズする予定だったんだ」

浩之さんは、私の薬指に嵌めていく。
サイズは寸分の狂いもなく、ぴったりだ。


「昨日の俺に先を超された。だけど改めて言わせて欲しい。俺と結婚してください」

昨日とは違う、いつもの厳しい表情をしている。
だけど──瞳の奥には、あの優しさが垣間見れた。


「本当に、私のことが好きですか?」
「今更言わないでくれ。愛してるに決まってるだろ」

ふっと笑う顔は、少しだけ自信がなさそう。