翌朝、いつもセットしてあるアラームで目が覚めた。

体を起こすと、浩之さんもムクリと起き上がる。


「おはようございま……」
目が合った瞬間──浩之さんの顔が真っ赤に染まった。

「あの、浩之さ……」
「遥」

ああ……この呼び方は、記憶を失う前の言い方だ。


「記憶、戻りました?」
「あぁ、全て恥ずかしいぐらい」

狼狽えたように、首をぶるんぶるん振るわせては、頭を抱えている。


「くっそ…………」
「あの……」


そして飛び起きると、部屋を出ていった。

ひょっとしたら……あの昨日のことを取り消したいのだろうか。私に『可愛い』と言いまくってたのは間違いだったのだろうか。


「遥」


再び浩之さんが現れ、近付くと頭に何かがポンと置かれた。

「くそっ……俺に先を越された」

触ってみると、何かゴツゴツしている。

遠くの姿見に目をやると、私の顔が小さく写っていた。
頭に乗っていたのは──小さなティアラだった。