その日の夜。
浩之さんと私は一緒に寝ることにした。
性的なことは一切しない約束で……ただ二人で、寝るまで色々話したかったのだ。

中学生の時、寮に遊びに行ったことをこっびどく叱られたことを話すと「当たり前だ」と。

「こんなに可愛い子を思春期の野郎共の目に触れさせたくないに決まってるでしょ。いやむしろ、家からも出したくないと思う」
「じゃぁ外に連れて行けないって言われたのは……」
「そりゃ可愛い遥に何かあったらどうすんの?」

まぁ今でも過保護な理由は、よくわかった。

「でも最近は、ずっと優しくなかった……」
「きっと恥ずかしかったんだよ。好きな子の前ではかっこつけたいし、自分の方が好きな気持ちが上回りすぎてるって気付いてたと思うし。その辺はわかってよ」

何だか不思議だなぁ、と。
記憶が無いから、変に上下関係がある『兄妹』にならない。
ちゃんと『婚約者』として対等に接してくれているし、私も対等に見ることができる。


少しすると、浩之さんは大きな欠伸をした。

「寝ます?」
「大分寝てなかったからな……」

昨日はほぼ寝れなかったのだろうか。
一度目を閉じると、布団の中に深く沈んで行った。

「目が覚めても、隣に居るのが遥だったら嬉しい」
と、言いながら。


すやすや寝息を立てる様子に、クスりと笑みが溢れる。

「おやすみ」
私はそう声をかけて、彼の頭を撫でた。