蔑んだ目が私に向けられる。
私はそれに耐えれなくて、一人で家の庭で遊んでいた。


──そんな時に現れたのが、お兄様だった。

「できたよ」

花を摘む私の前に、お兄様は現れた。
手にはハルジオンの花冠を持っていて、私に近づくとそっと被せてくれた。

「どうかな?」

微笑むお兄様がひたすら眩しくて、私は泣きそうになっていた。


「ねえ遥、うちにおいでよ。僕らの家族になってよ」
「浩之お兄ちゃんが、本当の家族になるの?」
「なっていい?」

私はコクりと頷いた。
お兄ちゃんという存在は、私と遊んでくれる人。
だから本当の家族になったら、毎日一緒に遊べるのだと思ったのだ。

「うん、ずっと一緒だよね?」
「うーんでも、ずっと一緒では、ないかなぁ」

そう言われ落胆する私に、お兄様はこう言った。

「でも大人になったら、僕と結婚すればいい。それだったら、ずっと一緒に居れるよ」

多分、結婚の意味もあまりわかってなかったと思う。
だけどよく女の子にある『王子様と結婚』を夢見てた私は、それが現実になるのだということに喜んだ。

「じゃあ大人になったら、浩之お兄ちゃんと結婚する!」

そう宣言した後、我に返る。
そうなると、遊んでくれる"お兄ちゃん"は"お兄ちゃんでなくなる"と思ったのだ。

「だからそれまで、お兄ちゃんで居てね」