何となく家に居たくなくて、近くの公園に来てしまった。
昔は家族四人で、よく遊びに来ていた。


芝生の広場に、ぼんやりと座りながらこれからのことを考えていた。
何となく、私はお兄様と結婚する以外の道が無さそうなことはわかってきた。


(……そもそもみんな、私がこの家に来る前のことを『覚えていない』とは思ってないんじゃ?)

根本的な問題は、これなのかも知れない。

確かに普通に考えて、四歳なら記憶に残っていてもおかしくはない。
だけどまぁ養父母からすると……そんなデリケートな話題は出せなかったんだろうし、私が覚えていたとして、二人にそんな話ができたのかと言えば、多分できない。

うーんと頭を抱えていると──頭にフワッと何かが置かれた感触がした。

えっと驚き持ち上げてみると──それは、ハルジオンの花冠だった。


「写真で、あなたがハルジオンの花束を持っている写真があった。だからどうかなって」

後ろを向くと、お兄様がにっこりと微笑んでいた。


「作り方何で知って……」
「何か手が勝手に動いたんだよね」

お兄様は私の手から花冠を取ると、また私の頭に乗せた。
──ふと、昔のお兄様の姿が過る。


「どうしたの?」
「昔も、こんなことがあったの」

目の前の笑顔が、昔の姿に重なった。


そうだ、私はすっかりと忘れていた。
──私の初恋は、お兄様だった。