つまり、私の実の両親は会社をやっていたのだろう。
そして北大路工業と合併することになった。だから"人質"の意味合いでの婚約だったのかも知れない。


養父母が私を引き取った真意は、正直わからない。
『実の両親の身内が信用できなかった』とは聞かされている。

恐らくそのまま実の両親の会社は、北大路工業に吸収されているだろう。
ひょっとしたらその為に、私を手元に置いておきたいのかも知れない。


(だったら……受け入れるしかないのか)

赤の他人の私を育てる義務はないだろう。
打算はあっただろうが、私は養父母に対し育ててくれたことにはすごく感謝している。

──でもそれは、いずれ『お兄様と結婚する』という前提があるからだったら?


一枚、手紙と一緒に取れてしまった書類の中に、写真が入っていた。
ハルジオンの花が咲く場所で、仲良く写っている赤ちゃんと両親らしき男女の写真。

何となく、懐かしい光景だった。
きっと私と、実の両親だろう。

写真の中の三人は、すごく幸せそうに笑っていた。

──じゃぁ全部、ニセモノの幸せだったのか。