その時、あぁそうかと。
私の結婚は、この家にとって価値があるんだと。
だからいずれ政略結婚として、この家から嫁ぐ。この時に恥ずかしい思いをしないよう、精一杯勉強しようとより一層勉強した。
就職先もうちと同等かそれ以上の会社からの内定は貰えた、が、お兄様の説得で結局ノースエレクトリックに就職することになった。
『自分の立場をしっかり考えなさい』と言われたので、確かに浅はかだったなと。
私を使って北大路工業の失脚を目論む人も居るだろうと思い、ノースエレクトリックに就職することになった。


(て、奥様ってこの家の奥様ってことか!)

今更ながら気付いたのだ。
結局私の人生は、お兄様を中心に回っていたなぁ、とも。



そしてお兄様と別れて自分の部屋に帰ると、懐から手紙を取り出した。
読んでみると、やはり私達のことも書かれてあった。

『合併の話は喜んで進めさせていただきますが、遥とご子息の婚約については考えさせて貰いたい』と。

『幼いご子息の人生を今決めるのは、あまりにも酷なのではないかと存じます』とも。