家に帰ると、真っ先にお母様が飛んできた。
本当に心配して夜も眠れなかったと、大号泣だった。

お父様も仕事を放り出して帰ってきて……もうどれだけ心配したかを聞かされ続け、私はこれ以上心配をかけれないなと。
だから海外には行かずに、日本に留まることを決めたのだった。


本当は将来的に、海外の名門大学に進学しようと考えていた。
だからすごく勉強を頑張っていた。色んな外国語も勉強していた。

(だって役に立ちたかったんだもの……)


「お母様、私は何をしたらみんなの役に立つの?」
幼い頃、可愛がってくれる二人に、何を恩返しすればいいのかを聞いたことがある。

だけどお母様は、困った顔をしてこう言った。

「可愛いあなたがそこに居るだけで、十分だわ」

いや、それは私が聞きたい答えじゃない。
不満顔な私に、お母様は更にすごく困った顔をしていた。

「お母様、そうじゃないの。私が将来何になってくれたら嬉しいとか……」
「うーん、好きな勉強をして、好きな仕事をしてくれる。それが一番だわ」

いいこと言った、と言わんばかりのお母様。
だけど私が聞きたい答えはこれでもない訳で。
釈然としない私に、お母様はこう言った。

「強いて言うなら、この家の名前に恥じない、立派な奥様になってくれると嬉しいわね」と。