疑問を持った私は、お父様の書斎へと向かった。

過去にお兄様と結婚の約束をしたことはないかを振り返っていたが、やはり記憶がない。
そもそもだけど、私は四歳の時にこの家に来た時以前の記憶がないのだ。

ということは、この家に来る前──四歳以前の記憶が鍵なのかも知れない。
ふと書斎にある隠し金庫の存在を思い出し、何かカギは無いかと探ってみることに。


(あった、えっと……)
部屋の一番奥にある本棚の一段目。手前の本を取ると、小さな金庫が並んである。昔本を漁っていた時に見つけたやつだ。
私は片っ端から番号を入力する。
すると一つ、私の誕生日で開いた金庫があった。

(えっと、手紙……送り主が吉村だ……)

中には私の養子縁組みに関する書類もあり、手紙も入っていた。
そのうちの一枚、送り主の名前が『吉村』だったのだ。

その時──コツ、コツと誰かが廊下を歩く音がした。音はどんどん近付いてくる。私は慌ててその手紙と一緒に取れた数枚の紙を懐に仕舞った。