だから出ていった後は凄く寂しくて……お母様が面談で学校を訪問する時にはゴリ押しで、私も一緒に行ったのだ。

きっと喜んでくれるはず。
そう思っていたけれど……予想とは違い、お兄様は私を叱った。
「もう来るんじゃない」と。
なぜか「危険すぎる」と、こっぴどく叱られたのだ。


多分この時からだっただろう。お兄様と徐々に距離が開いていったのは。
高校を卒業すると家に帰ってきたが、この頃には私も高校生。家族で出かけるイベントもさほどなく、距離はずっと開いたままだった。



お兄様は隣に座ると、私の肩に手を回して頭をくしゃりと撫でた。
へっ?と驚き、お兄様を見つめる。

「あぁ、ごめん、嫌だった?」
「いや……別に……」
「何かねぇ、遥を見てると、ついついこうしたくなるんだよね」

ふっと口角を上げて笑うお兄様に、胸の奥がチクンとなる。

あの中学の一件があった後。
夏休みで帰省したお兄様に、同じことをやられて「もう止めて!」と怒ったのだ。

「そんな何もなかったようにヘラヘラしないで!」とか「もう小さい子みたいに扱わないで!」とも言った気がする。
多分あの「もう来るんじゃない」の言葉を根に持っていたから、余計に言いすぎてしまった。
確かにそれから、お兄様はそっけなくなったよなぁ……と。

(となると、原因私か……?)


幼い頃は甘やかしてくれて、それが本心からだったのはわかった。
何となくそっけなくなったきっかけも思い出した。

(じゃぁいつ結婚の約束したっけ?)