「まあ、そうですね! みんな可愛いねーって褒めたたえてくれました!」

「へえ」

「お付き合いをしてきた方は、みんな私を大事にして、可愛がって、お姫様みたいに扱ってくれたんですよ~アハハ」

 自分で言ってて空しすぎる。お姫様って。お姫さまって! でもいいのだ、これぐらい馬鹿丸出しで。

 理人さんは何度か頷いたあと、私に聞いた。

「なぜそれだけ可愛がってくれた男性と終わってしまったんですか?」

 ぎくりとする。しまった、そんなところまで全然考えていなかった。確かに、めちゃくちゃ愛されていました、というなら、なぜ別れたというのか。

 必死に考えた。なるべく引かれるような答えを生み出すんだ、理人さんの表情が固まるくらいの。

 わざとらしく腕を組み、首を傾げて考えるふりをした。

「えっとー、いつも私からお別れをしましたあ」

「京香さんから。それはなぜですか?」

「やっぱり、飽きちゃうんですよね。同じ人とずっと付き合ってるの」

 そう発言した自分を抱きしめたかった、瞬時に考えた割に、最高の答えじゃないか。

 散々尽くさせて飽きたから捨てた。これ以上ないクソ女だ。私なら、『鏡見て出直せよ』とぶん殴ってる。せめて千年に一度の美少女ぐらいになってから言え。

 どや顔で理人さんを見る。彼はじっと考えるように私を見ている。さあどうする、どう来る? 漫画でもこんなに嫌な女、なかなか出てこないぞ。

 だがやはり私の期待を裏切るように、彼はにっこり笑うのだ。

「では、僕は飽きられないように努力せねばですね」

 白目向いて倒れそう、と嘆いた。もうこれ以上の引き出しはないぐらいなのに、彼にことごとくヒットしない。

 もはや嫌な女という設定を置き、私は自分の素直な疑問を投げかけた。