顔を背けて、冷たい声で言った。

「まあ、そうですね」

「よかった。明日からも頑張りますね」

「明日からも?」

「え? 今日だけじゃないですよね?」

「ももも、もちろんです、毎日です毎日!」

「はい」

 困り果ててとりあえず、酒を飲みほした。すぐにもう一本持ってきて飲み始める。飲まなきゃやってられない、誰かこの男の胸の内を教えてくれ。

 そこでふと、帰りに買ってきたハンカチを思い出した。私は取り出し、簡素な紙袋に包まれたハンカチを差し出した。

「そういえば、いいクリーニングを紹介してくださったら、お礼です」

「え?」

 目を丸くしてこちらを振り返った。私が差し出す小さな袋を見て、さらに目を見開く。ぽかんとして、私の顔を袋を交互に見る。

 私はその表情を必死に観察した。どうだ、あれだけ高価なものばかり買ってもらったのに、返しはこのノーブランドのやっすいハンカチ一枚だぞ。プレゼントは値段じゃない、なんて綺麗ごと通用しないだろう。普通なら頬を引きつらせるところだ。

 理人さんが手を出して受け取る。そして尋ねた。

「開けていいですか?」

「はい、どうぞ」

 もはや贈ったこちらが恥ずかしいほどの品。四万五千円の服を棚一列買ってもらっておきながら、お返しがこれって。中学生でももっとまともなものを返すと思う。でもこれでいいんだ、私はケチな女なんだ!

 袋から紺色のハンカチが取り出される。私はとにかく酒を煽った。じっとハンカチを見つめた理人さんの表情を、緊張しながらちらりと見る。

 彼はハンカチを持っていない方の手で、口を覆った。おお、もしや呆れを隠し切れないか? 爆笑しちゃうか? 私は勢いよく隣を振り返る。