「そりゃ外見も好みで驚いたって言ってたけど、もしハマったら絶対後できついのは京香だよ」

 朋美は本当に心配そうに言った。私も指摘され、理人さんを無意識に庇っていたんだと気が付く。

 落ち着け、落ち着け私。そうだ、彼はとても優しい。優しすぎるのが変だし怪しいんじゃないか。

 全部演技で計算だとしたらどうする。そうだよ、だって、私みたいな平凡な女を結婚相手に選ぶはずもないのに。

 そう考えると、なぜか頭の中でそれを否定したい自分がいる。愕然とするしかない、真実から目を背けたい自分がいるのだ。

「で、でもまあ、今私がいったのは憶測だよもちろん。本当のところは分からないから」

「ううん、でも、尤もなことだった。私どうすればいいんだろう、嫌われる演技、つづけた方がいいのかな、後でそれが仇になるかも」

「ぶっちゃけ止めたとしても今更な気がする。一時間ごとのラインの証拠も残ってるし、いろんな人に目撃されてるし」

「そうだね、今更だね……」

「とりあえず、もうちょっと相手を探りながら色々やってみれば? 今までの話は憶測なんだから、もしかして本当に天然男なだけかもだし!」

「そうだね、相手を探りながら、ね……」

 混乱で頭が何も回らなかった。店員がいくつか頼んだ料理を運んできたが、それもあまり喉を通らない。朋美はそんな私を心配そうに見つめていた。

 本当はうちの会社を徹底的に潰すことが目的で、全部計算だったら……。私は今からどうふるまっても、破滅しかないんだと思った。