大月も車で箱根に向かう最中だった。同乗しているのは、看護師長が2名と看護主任1名である。

「雨が降ってきましたね」
「そうですね、、雨だなんて、、あら?あの木の下にいるのは大澤先生じゃないかしら?」

看護主任のそんな言葉に、みんなが目を向ける

「そうかしら?違うんじゃない?」
「確か、大澤先生は随分先に研修医の車に乗っていたと思うけど」
「今夜の主役なんだし、こんなところにいないだろ」
「でも、あんな美人さん、滅多にいませんからね、ご本人でしょ」
「どうして、あんなところに?」

大月はそう言いながらも、だんだん気になってしまう。
そうなると、確認の意味もこめて病院の医局へ電話を入れてしまう。
気になる事があれば、確認せずにはいられない性格なのだろう。
オペレーターに残っている循環器内科の医師なら誰でもいいと
呼び出しをすると、意外な男が電話に出た。

『はい、大月か?どうした?』
「片瀬か?お前、主役の一人だろ? 何してる? 行かないつもりか?」


『ああ、、行くよ。ちょっと野暮用でね。ところでどうした?
僕を心配して電話かけて来たわけじゃないだろ?』

「まさか、、大澤先生、薫先生はいるか?」
『大澤先生? なんで?』

「違うとは思うんだが、道端で彼女に似た女性を見かけたんでね、
まぁ、きっと見間違いだろう」
『、、一応、確認してみるけど、、』

「そうか、じゃあお前も急げよ」


『終わったら速攻で行くよ』
「ああ、、」