「実は、医局の当直室のシャワールームさ、中が見えるようになってるんだ」

「ええ~~!」「きゃあ~!」「なんで~~?!」
「・・・・・うそ?」


皆、それぞれに驚きの声がでるけど、私はあの日の事が頭の中に浮かんだ
続けて、そんな事を何も知らない木村先生が話し出す。

「この前、その当直室でシャワールームを覗き見してた研修医がいてさ
偶然にもその日、当直だった片瀬先生に見つかったのさ。
そりゃかなり怒ったみたいで。誰かがシャワールームの横の
当直室の壁に覗き穴を作ったんだよ。女医さん狙いだよね」

「うそ~ッ! 覗き穴ですって?!」

「驚きだろ?だけどその研修医の事を、片瀬先生ちゃんと修理するまで許さない
って。 僕も知ってる奴なんだけど、先輩が怖いって言ってたよ。
今日、土曜日だろ?その研修医と一緒に補修工事中だよッ
先輩はアツイ男だからなぁ~~ ああ~僕が惚れそうだ」

「・・・あの、木村先生・・その・・片瀬先生は、壁の補修のために?」

私は、木村先生にもう一度聞き返した。


「うん、そうですよッ! あっ薫先生、先輩には秘密ですよッ!
何で遅れるのか、しつこく聞いてやっと理由を言ってくれたから。
ああ~ッ!特に女医には言うなって言ってましたからネ!」


車はすでに大学病院から随分離れていた
軽快に走るその道を見ながら先週の事を思い出していた

私がシャワー室から出た時に、俊が突然に怒るように言った言葉

”何でここでシャワーなんか使うんだッ!危ないだろう!"


そうか、そうだったのね
だから彼はあんなに真剣に怒って
怒る理由を私に言わなかったのは、私の気持ちに配慮して