ルヴェルグはクローディアの好物であるドライフルーツを手に取ると、口元に運んで食べさせた。いつもはエレノスがしていることだがたまにはいいだろう。帝位に就いてからは月に片手で数えるほどしか会えていないのだから。

「…少し窶れたな。夜は眠れているか? 食事はちゃんと摂っているのか?」

「ルヴェルグお兄様…」

年頃の娘にしては細すぎるクローディアは、転んだだけで大変なことになってしまいそうなくらいに危うく儚げな雰囲気をしている。

会うたびに妹が痩せている気がしてならないルヴェルグは、侍女に食事の記録表でも提出させようか考えてしまっていた。

「このような場は苦手であろう。エレノスと一曲踊り、民衆の前に顔を出したら自宮に戻って休むといい」

クローディアは幼い頃から病気がちで、長時間の外出や公務で無理をさせると熱を出してしまっていた。その為、兄たちが積極的に公務を行い、皇女は極力外には出さないようにしているが、今日だけは無理をせざるを得なかったらしい。

愛しい妹の手が熱を持ち、少し呼吸が乱れていることにいち早く気づいたルヴェルグは、クローディアの頭をそっと撫でた。

「ですが今日は建国千年祭…。他国の王族の方もお越しになるので、そういうわけには参りません」

「確かに来賓は多いが、エレノスとローレンスがいる。今日はオルシェ公とベルンハルト公子も来ているから問題ないだろう」

ベルンハルト公子の名が出た途端、クローディアはぱっと顔を輝かせた。

「まあっ、ベルがっ…!?」

おやつを待っている仔犬のように嬉々とした表情を浮かべているクローディアは、今にも駆け出しそうだ。予想通りの反応に思わず笑ってしまったルヴェルグは「行ってくるといい」と声をかけた。