今日は皇族四人が揃う滅多にない機会だから、日頃から奇抜なものを着ているローレンスともお揃いにしたいと思っていたエレノスだったが、世の中そううまくはいかないらしい。

(…今日だけはマトモな服を着せなければと思い用意したが)

一体なぜこうなってしまったのか、とエレノスは頭を悩ませたが、クローディアに裾を引かれて我に返った。時を見計らったかのように、宮の階段脇にいる楽団が皇帝を出迎える曲を演奏し始めた。

「…ルヴェルグ兄様だわ。ローレンス兄様、お兄様、行きましょう?」

「そうだね、ディア。ローレンスも行こう」

エレノスはローレンスとディアのエスコートを交代すると、先陣を切るように二人の前を歩き出した。

いつのまにかローレンスの胸元から引き抜いていた紫色の薔薇──国旗の花でもあるサイレントローズを白銀の剣とともに持ちながら。