* ── * ── *

陽が闇に塗りつぶされ、夜の太陽が顔を出した頃。眩い月がぼんやりと浮かんでいる空を眺めていたクローディアは、扉が開く音で我に返った。

「──ディア」

扉が開くと同時に、リアンが姿を現す。入浴からそれほど時が経っていないのか、きらきらと輝く金色の髪は雫を纏い、艶やかに光っていた。

「…どうしたの? リアン」

クローディアは長いカーテンを閉め、ベッドの端に腰を掛けた。そうしてリアンに部屋に入るよう手招きをする。


結婚式を挙げてから、今日で半月。クローディアの夫となったリアンが堂々と二人の寝室に入って来なかったのは、初夜から三日目以降は別々に寝ていたからだ。

とは言っても、別室で寝ていたわけではなく、クローディアは寝室のベッドで、リアンはソファで寝起きをしていた。

話し合ってそうしていたわけではないが、四日目から公務で別行動を取っており、就寝時間が合わなかった為に、先に寝ているクローディアを起こすのは忍びないと考えたのか、リアンは自らソファで寝ていたようだった。

「……いや、その…今夜から同じベッドで寝ようと思って」

リアンは何度か口を開き、閉じてから、小さな声で伝えた。

その言葉にクローディアは首を傾げた。何も共に寝る必要はないと考えていたからだ。それをリアンも承知していると思っていた。

だって、二人は形だけの夫婦なのだから。