千隼くんと話してると、たまに時間の使い方が勿体ないって思うときがある。
この話はもっと最初の頃に話せたでしょって。
今のは確実にそのなかに該当する話題のひとつだ。
「だからこそ俺は…すごい親不孝だなって思う」
「え、どうして…?」
ほら、踏み込むと黙ってしまう。
今のは考える前に言葉が出てしまっていたから、次からはすぐ質問してしまわないようにしよう。
「わあ、オレンジ!」
お店を出ると、目の前は夕陽一色になっていた。
寒ければ寒いほどに、空は夕陽も星も綺麗に見えるらしい。
ぶわっと吹いた2月半ばの向かい風が鼻を刺激する黄昏時。
ガラス窓に映った自分の頬はほんのり赤色をしていた。
「千隼くん、手っ」
いつも繋ごう。
繋げたら、じゃなくて。
繋げるときは、でもなくて。
ぜったい繋ぐの。
こうやって手を繋ぐことを当たり前にしよう。
「李衣の手は……ぬるいな」
「えっ、なにその微妙な温度…!」
「でも俺も似たようなものだから、ふたりで繋げば…温かくなる」