「待たせた?」
一人の女性が、言った。
「大丈夫だよ」
一人の男性が、言った。
「元気だったかい?」
「ええ元気よ」
二人は、ゆっくりと歩いた。
「あ、これ綺麗だね」
それは、花屋だった。
「いらっしゃいませ」
色とりどりの花々が、咲き誇っている。
「何かお薦め頼むよ」
男性が、言った。
「はい。わかりました。これならいかがでしょうか?」
それは、小さな箱だった。
「わかった。それを一つ頼むよ」
男性は、代金を支払った。
「ありがとうございました」
店員が、言った。
二人は、またゆっくりと歩き始めた。
「あげるよ。これ」
「えっ・・・・・・」
「いいから。いいから。これを君の家の庭に埋めるといい」
「なぜ?」
「大丈夫だから」
「わかったわ・・・」
夜。
「まぁ、いいわ」
そう女性は、呟きながら小さな箱を庭に埋めた。
するとどうだろう。
先ほどまで出ていた雲が、すっかりと無くなった。
そして、月が彼女と庭を照らし出した。
少しの間。
土が、こんもりと盛り上がってきて、季節はずれの向日葵やチューリップやビオラ、パンジーが咲きだしてきた。そして最後にはペチュニア。
女性は、埋める前の箱に入ってあった説明書を読んだ。
―――この箱から生まれてくる花々は、あなたの心の鏡―――
ペチュニアの花言葉は、”あなたといると心が和む”
女性は、満面の笑顔になった。
そして、女性の目からは涙がこぼれ落ちた。