叫ぶと、望が俺らのほうを振り向く。

 振り向かなくていいから、早く避けて......っ、

 でもわかってた。

 避けられない。

 避けることはできない。

 ってことは、望は——

 望は()()に俺らのほうを見て——、

 ゴッ、と。

 嫌な音がした。

 望が仰向(あおむ)けに倒れて、母親の乗っている自転車は勢いがなくなり止まる。

 

「っの、のぞむ......、のぞむ......、」

「の、のぞむ......な、おい......あ、」



 望のところへ二人かける。

 望は返事をしなくて、頭から血を流していて、息を......。

 望の口元に手をかざす。

 何もない。

 何も、感触が感覚がなかった。

 ......息してない。

 まさか、まさか、そんな、噓だ......。

 望の左胸に手を当てる。

 ——心臓の位置。

 どくっ、どくっ、どくっ、ど——。

 まだ、......心臓は、動いてる............。

 安心するのもつかの間。

 どく、どく、どく、とくん、とくん、とくっ——。

 左胸にあてた手に伝わる感覚が、弱くなってきている。