俺らはグイっと奇打の手首をつかんで、引っ張った。

 奇打が俺らを見る。

 何を察したのか、奇打は陽詩に向かって告げた。



「陽詩、先行ってて」

「なんかあるの?」

「なんとなく。ちょっとね」

「そう?」



 先に教室に入っていった陽詩。

 奇打と俺らは入ったのを見届けた後、俺らは奇打を空き教室に引っ張り込んだ。



「えっ? 何?」

「な、どっちがどっちだかわかんのか」



 俺はできるだけ、さーっぽくして奇打に話しかけた。



「わかるのか?」



 さーも俺に似せて奇打に話しかける。

 奇打は驚いたかのようにしていった。

 きょとん、とさせて俺らに問う。



「どうかした?」

「どうもしてねーよ」

「どうもしてないっつーの」



 今はこんなことなんかじゃなくて、見分けられるかを聞いてんだよ......!

 奇打は俺らを見て、指をさしながら言った。



「大空って書いて、ツバサくん。翼に皐月の皐で、ツバサくん」