っつーか“煌舞(こうぶ)”の集会がある。

 遅刻とか、欠席なんて......幹部(かんぶ)が、そんなこと許されないっつーのに。

 ああ、終わった。

 そう思った瞬間だった。

 俺の後ろの気配が、ぴりついた。

 気配がさえわたり、とがる。

 なんだ、これ......。

 後ろから、ガタッと椅子を引く音がする。

 この教室にいる全員が、その音のした方向を見た。

 俺も、後ろを振り返る。

 そこにいたのは、

 ――奇打 心空。

 立っている希打を陽詩が心配そうに見つめて、くいくいっと奇打の制服の袖をつかんでいる。



「心空、ちょっと、それ、......なにや......」

「陽詩、平気だよ」


 
 そう微笑んで陽詩に言葉を告げた後、そいつは教師をしかと見つめた。



「先生、しゃべっていたのは私です。私が大空くんにちょっかいをかけました」



 .........はぁ?

 こいつ......何言ってんの.........?



「あ、あらそうなのお? でも、この問題は悲夢 おおぞらくんに......」

「先生」



 俺のことをおおぞらと呼ぶ教師と、それを厳しい声で遮る奇打。

 クラスの奴らみんなが教師と奇打に注目していた。

 こいつ、......。

 馬鹿なの?

 おかしすぎるだろ、こんなところで助けてくれる人間なんか、どこにも............。



「先生。おおぞらくん、じゃありません。ツバサ(大空)くんです。撤回してもらえますか」



 教師をまっすぐに見つめて言うそいつ。

 (たず)ねているように見えるけど、尋ねてなんかいなかった。

 文の後ろに?がついてない。

 ...なんなんだ、こいつは......。

 奇打の言葉に顔を真っ赤にして震えている教師。



「あ、あなたにこの問題とけるのっ⁉」



 バン、と教師が問題の書かれた黒板をたたく。

 ――データの分散。

 教科書にも載ってないし、授業でもやっていない問題が、ただつらつらと黒板に白くつづられている。

 奇打はこの問題を見つめた後。



「......ふっ、かわいそ」

「どーせ解けないんでしょ、」

「あいつ裏転校なんでしょ? 解けるわけないっつーの」



 固まった。

 でも、目はまっすぐに黒板のほうへ向けられている。

 顔を真っ赤にして、肩で息をしている教師。

 奇打を馬鹿にしたように(あわ)れんでいるクラスメイト。

 そんなものを気にせず、奇打は問題を見つめた。

 数秒後。



「748」



 彼女はさらりと答えを口にした。