「ちょっと我慢してて。もうすぐ終わるから」

「.........ん」



 なんか、琉宇が言うことをよく聞く。 

 消毒をして、しっぷをはった。

 そのまま、しっぷをはった琉宇の頬をつつーっとなぞり、仕上げ。

 しっぷをはった琉宇の頬はちょっと痛々しい。

 

「......ありがと」



 琉宇がお礼を言ってきた。

 

「......どういたしまして!」



 琉宇をたたいたのは私だから、お礼を言われるのはおかしいと思うけど、お礼を言われたのは素直にうれしくなった。

 琉宇は立ち上がり、がらりと扉を引いて保健室を出ていく。

 私もその後を追った。

 ..................無言。沈黙。

 そういうのが苦手なわけじゃないんだけど、琉宇は苦手なのかな?

 黙りこくっている琉宇の隣を並んで歩きながら、琉宇の顔を盗み見る。



「........................なに」



 琉宇が私のほうを見ていた。

 ......⁉



「ばれてた......⁉」

「わかるわ。舐めちゃだめだぞ」



 ......ばれてたとは思っていなかった。

 舐めちゃダメって、あながち間違ってないなあ。



「............ふふっ」



 なんだか無性におかしくて笑っていると、琉宇がそんな私に反撃しだした。



「......なに笑ってんだよ」

「えっ、えっ、だって......」

「言っとくけど、俺の頬をこんなんにしたのはお前だかんな」
 
「うっ......」



 何も言い返せない、です............。

 黙っていると、琉宇が勝ち誇ったようにふっ、と笑った。