「わたくし、何事も自分の目で見て確かめたい性質ですの。もちろん限界はございますし、既に影響が生じていると決まったわけではございませんが、あちらの皆さまが困っているのは間違いございませんもの。行って、励まして差し上げたいのですわ」





 エルビナはそう言って穏やかに微笑む。




(なんて高潔な女性なんだ……!)





 己の目で物事を見て、実際に民に触れ合って、それから苦しみを分かち合おうとする。こんなこと、普通の令嬢には絶対できない。これはきっと、聖女だからこそ持ち得た慈愛の精神なのだろう。





「俺も一緒に行っても良い?」





 気づけば俺はそう尋ねていた。

 正直言って公務は目白押しだし、王族の遠征は手間がかかる。スケジュールの調整や護衛の手配、側近たちには手間をかけてしまうが、それでも彼女と同じものを見て見たいと思ってしまう。





「もちろん。是非、ご一緒していただきたいです」





 あまりにも可憐に微笑むエルビナが愛しくて、俺は彼女を抱き締めた。