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 エルビナは俺の想像以上に素晴らしい女性だった。



 婚約者になって以降、出来る限り食事や茶会の機会を作り、交流を持つようにしているのだが、彼女の頭の中はいつも国民のことでいっぱいで。会話の大半は聖堂を訪れる人々や、遠征の時に出会った民、領地の話で埋め尽くされていた。





「――――そうか。それで西部に遠征を希望しているんだね」



「ええ。あちらでは今、例年よりも嵐がたくさん来ておりますでしょう? 水害はなくとも、不作の原因にはなりますし、生態系にまで影響が出ているかもしれませんもの。報告が上がって来ていないだけで、水路や道路に問題が発生している可能性もございますし」



「現時点でエルビナの力が必要か分からないし、はじめは文官や騎士を派遣しても良いんじゃないかな?」





 聖女の力は広範囲に及ぶ。けれど、大地に恵みを与えたり、天候を操るためには、直接現地に赴く必要があるらしい。