しばらく歩いた先に赤茶けたレンガ造りの建物が見えてきた。

アイビーの弦を這わせた年期の入った大きな黒い扉。

隠れ家的な、その中に足を踏み入れるのを躊躇してしまうような恐れ多い程の期待が詰まっている場所。

何かを焼いている香ばしい匂いが漂っている。

彼がその扉を押し開けた途端、中から外の暗闇を一気に照らす明るい光が放たれた。

まるで光の中に浮かんでいるような彼が私の方にゆっくりと顔を向ける。

「おいで、樹」

この景色はどこかで……。

そんなことはどうでもいい。

私は繋がれたその手をギュッと握り返した。




……END

最後までお読み頂きありがとうございました☆