「樹ちゃん」

「はい……」

「ご両親は……一緒に住んでいるのかな」

え?どうしてそんなこと聞いてくるんだろ。

もしかして、私にモーションかけてるとか?

まさか、だよね。いくらなんでも、親子ほど年齢離れてるし。

「両親はいません。母は五年前に亡くなりました。父は……」

「亡くなった?」

西城さんの目が大きく見開かれ、私の目を怖いくらいに凝視する。

「ど、どうして……?」

明らかに動揺している西城さんを前に、私も動揺していた。

「あの、母は病気を患ってしまって、それが原因で亡くなりました」

「病気?……病気か……」

西城さんは肘をつき、額に手を当てうつ向く。

ショックを隠しきれないその様子に母と近しい関係だったのかもしれないと感じた。

「……お父さんは?」

そして、うつ向いたままゆっくりと静かに尋ねた。

「父はいません。私もどこにいるのか知りません」

「いない?」

「ずっと母からは死んだと言われていたんですけど、母が亡くなる直前生きてるって教えてくれて」

「そうか……」

あまりにも憔悴した西城さんを前に、ふっとある思いが頭をよぎる。

でも、まさかだよね。

あり得ないよね。

そんなこと。

そんなこと……。