プロローグ
「どうぞこちらへ」
黒いスーツ姿の給仕らしき男性が私に深々と頭を下げている。
その男性に招かれるまま、宮殿のようなゴージャスな大広間から出ると、目の前に赤絨毯が敷かれた長い廊下が一直線に続いていた。
ここはどこなの?
理解が及ばないながらも、その赤い絨毯の上を恐る恐る進んで行く。
絨毯の先には大きな扉が開いており、まばゆい光が差し込んでいた。
思わず手をかざし、目を細めると、その光の中にぼんやりと誰かが立っているのが見える。
近づくにつれその人物の輪郭が露わになってゆく。
180以上はあるだろう長身の黒いスーツを着た男性の後ろ姿に見えるけど、そのフォルムはこの世のものとは思えないほど美しく、扉の向こうから吹く風にその男性の髪とジャケットの裾が柔らかく揺れていた。
そんな姿に見とれていると、男性がゆっくりとこちらに顔を向ける。
胸が苦しい程にドキドキしていた。
端整な横顔。長いまつ毛。
整った小さな顔が期待と緊張で張り裂けそうな私の正面を見据えた。
オールバックにした彼の額と眉は品性と聡明さを湛え、切れ長の瞳の奥はキラキラと輝いている。
引き締まった口元が僅かに開き、微笑んだ。
「おいで。樹」
低音で心地のいい声が私の頭の中に反響している。
なぜ、私の名前を知っているの?
その男性は私にそっと手を伸ばすとそのまま扉の奥の光に吸い込まれるように消えていく。
「ま、待って!」
彼の方に慌てて手を伸ばし叫ぶも、扉は大きな音を立てて私の目の前で閉まった。
……ピピピ……
「どうぞこちらへ」
黒いスーツ姿の給仕らしき男性が私に深々と頭を下げている。
その男性に招かれるまま、宮殿のようなゴージャスな大広間から出ると、目の前に赤絨毯が敷かれた長い廊下が一直線に続いていた。
ここはどこなの?
理解が及ばないながらも、その赤い絨毯の上を恐る恐る進んで行く。
絨毯の先には大きな扉が開いており、まばゆい光が差し込んでいた。
思わず手をかざし、目を細めると、その光の中にぼんやりと誰かが立っているのが見える。
近づくにつれその人物の輪郭が露わになってゆく。
180以上はあるだろう長身の黒いスーツを着た男性の後ろ姿に見えるけど、そのフォルムはこの世のものとは思えないほど美しく、扉の向こうから吹く風にその男性の髪とジャケットの裾が柔らかく揺れていた。
そんな姿に見とれていると、男性がゆっくりとこちらに顔を向ける。
胸が苦しい程にドキドキしていた。
端整な横顔。長いまつ毛。
整った小さな顔が期待と緊張で張り裂けそうな私の正面を見据えた。
オールバックにした彼の額と眉は品性と聡明さを湛え、切れ長の瞳の奥はキラキラと輝いている。
引き締まった口元が僅かに開き、微笑んだ。
「おいで。樹」
低音で心地のいい声が私の頭の中に反響している。
なぜ、私の名前を知っているの?
その男性は私にそっと手を伸ばすとそのまま扉の奥の光に吸い込まれるように消えていく。
「ま、待って!」
彼の方に慌てて手を伸ばし叫ぶも、扉は大きな音を立てて私の目の前で閉まった。
……ピピピ……