「お姉ちゃん、真広(まひろ)くんだよ!真広くん!」


雨音がはしゃいで声を上げた。


鬼塚(おにづか)真広。それが彼の名前だった。


「もー、わかってるから。ほら、真広くんしゃべるから静かにして!」


慈雨は妹を制し、じっと画面に見入った。


そんな姉を雨音はニヤニヤして見ている。


雨音の方はもともとアイドルには興味がなかったのだが、姉の好きな人だと認識してからは、応援しているのか茶化しているのか、何かと首を突っ込んでくるようになっていた。


2人のイケメンが画面中央に映し出される。


スパンコールや羽根をあしらった、いかにもアイドルらしいキラキラの衣装。


それから、
カメラが胸から上に寄った。


テレビ画面の下に「AO」の文字と、それぞれの名前。


青山尚の頭文字のA、鬼塚真広の頭文字のO。


二人の頭文字を並べた「AO(あお)」が彼ら二人のユニット名だ。