「あんた出かけるの?正気?」
出かける準備を始めたわたしに、母は視線をテレビに向けたまま言った。
この街がいつ破壊されるか分からない。
だからといって、数ヶ月前から企画されていた高校の同窓会を、今更ドタキャンするなんてありえない。
「気をつけなさいよ」
「分かってるって」
母を含めた人々は世界が終わることを恐れている。
だけど、わたしは違かった。
世界がいずれ終わりを迎えることを知っていたからか。
それとも、世界が終わることを望んでいたからか。
分からないけれど、近いうちに世界が終わりを迎えるのなら、わたしはその光景をしっかり瞼に焼き付けたい。
だってきっと、世界が終わるその瞬間は、言葉にできないほどに、美しいと思うから。