居場所さえなくなり、自販機の設置されている休憩スペースに取り敢えず落ち着く。「はぁー」と陣取った長椅子で深い息を吐き肩を落とせば、座り心地まあまあなクッションが全身から力を抜きとっていった。

 こんな時はカフェインだと、目に入った缶コーヒー。小銭を探して財布と睨み合い数秒、ジーンズの後ろポケットで何かがやたらと振動していることに気がついた。いつもどこかに置き忘れては頭を悩ますスマートフォン。今日は探す手間が省けたと受けた電話の相手は開口一番、【やっぱり元気ないね。大丈夫?】とこちらの様子を窺っていた。

「そんなことないよ」と動揺を強がりで隠す。

【何かあったんだ……。俺には遠慮なく頼っていいって昨日言ったよね?】

「私を甘やかすとロクなことないよ」

【俺は甘えて欲しい】

「イオ⋯⋯」

 振り払っていた昨夜のことが突然脳裏を過ぎり困惑する。