「あの着物のデザインって⋯⋯」

「俺⋯⋯って言いたいとこだけど、あれ全部『聚楽──Juraku──』の着物だよ。な? 千知」

「まぁな⋯⋯」

「だと思った」

 差し出されたバックを「どうも」と受け取とる私を不思議そうに見つめるその目。

「あの鱗紋的な柄の浴衣、一枚持ってるから」

 そこに並べられている写真の中に見た事のある柄を見つけたのだ。それはこの間着ていた浴衣と同じ柄だった。

『聚楽──Juraku──』というブランドだと店長に聞かされたのはごく最近の話。

「へぇー」

 意外だとでも言いたげな反応に、たまたま貰ったのだと答えた。

「それじゃあ、私はここにいたら邪魔みたいだから⋯⋯」

 別の場所に移動すると伝え、二人に軽く会釈。バッグの持ち手に腕を通し、後生大事に抱えていた小物たちを抱え直すと、千知を避けるようにそそくさとその場を立ち去った。