並んで歩く遊歩道から満天に輝く空を仰ぎ見る。ネオン煌めく歓楽街は川の向こう側。こんな都会の寒空の下でも眺めることのできる星々に零れるため息が、白い靄のよう現れては闇に消えて行く。そのまま視線を下ろしたその瞬間、この視界を何かが横切った気がした。
「ちょっ、あれ⋯⋯」
すかさず反応したのは友人の方。後方を指さし目を見開く姿になぞる視線の先、捉えたその影の正体に頭の中は真っ白になっていた。
そこにいたのは、仲睦まじく恋人同士の如く肩を並べ、腕を絡めて歩く二人組の男女。この瞬間、失恋決定。
言葉なく立ち尽くす中、心にじわじわと染み入る現実を噛みしめていた。
それは千知と紗帆の後ろ姿。背後からでも絵になる二人にもはや完敗だった。
伏見絆利、三十路の大失恋で木っ端微塵。
そして────見て見ぬ振りをすることを決めた。
「ちょっ、あれ⋯⋯」
すかさず反応したのは友人の方。後方を指さし目を見開く姿になぞる視線の先、捉えたその影の正体に頭の中は真っ白になっていた。
そこにいたのは、仲睦まじく恋人同士の如く肩を並べ、腕を絡めて歩く二人組の男女。この瞬間、失恋決定。
言葉なく立ち尽くす中、心にじわじわと染み入る現実を噛みしめていた。
それは千知と紗帆の後ろ姿。背後からでも絵になる二人にもはや完敗だった。
伏見絆利、三十路の大失恋で木っ端微塵。
そして────見て見ぬ振りをすることを決めた。