結局は「いい人」止まり。

 悪く思われるのが嫌で、他人からの評価が怖くて。無意識に周囲の顔色を窺ってしまう。それは千知も含め、誰に対してもそうだった。例外は碧子だけ。

 だからだろうか?「隙がない」とよく言われた。

 警戒心強すぎて、逆に可愛げもなくなっていたのだ。

 友人との休日を満喫しすぎて、気づけば夕暮れ。晩秋の空はすっかり闇夜で、季節の変わり目特有の物悲しさに切なさが募った。

「けどさぁ、あんたはそれでいいわけ? ホントかウソか分かんない噂に流されて、よく分からないわだかまり抱えたままでいいの?」

 いいわけなどない。けれどウジウジ悩むのも好きじゃない。

 はぁーと吐き出す相手の深いため息に苦笑。「あのさぁ」と切り出した彼女に「ん?」とやる気なくその顔を見遣れば、さも呆れた表情がこちらをじとーと睨んでいた。

「前々から思ってたけど、あんた遠慮しすぎなんだって。周りに気遣いすぎ」

 そうは言ってもそれこそ性分なのだ。今更図太くなどなれない。