濡れた髪は、これまで目にしてきた落ち着いたダークブラウンとは全く異なるアッシュブロンド。それには驚いた。加えて切れ長な一重の目元はとても涼しげで、鼻筋の通った綺麗な顔立ちは相も変わらずなイケメン具合。久しぶりに会ったが、その色気と存在感は健在だった。近く見慣れてきた伊織も規格外のイケメンだが、彼はまだ20代半ば。男らしさや色気もあるが、まだ可愛らしさが抜けていない。まぁそれが彼の魅力でもあるが、無意識に二人を見比べてその顔面偏差値の高さには大いに感心してしまっている自分がいた。

「あの榊って男、ただの同僚?」

「どういう意味?」

「友達か、それ以上か」

「友達でもそれ以上でもない。ただの仕事上の付き合い。……って、何でそんなことあんたに説明しなきゃいけないのよ」

「あいつ、かなりモテるだろ?」

「あんたくらいモテてる」

「だろうな」と自分のことも否定しないそのナルシスト具合は、冗談なのかまさかの本気か? 素でそう思っているとしたら、それこそドン引きだ。

「まぁ、あの顔じゃ女がほっとかないよな。でも⋯⋯あいつは────」

「榊伊織。あいつなんて呼ばないであげて」

 失礼だと、軽く非難する。話の腰を折られた彼は、軽く鼻で笑い手にしていた書類を再びテーブルに置き直した。