テーブルに置いたペットボトルに手持ち無沙汰になった片手は、完成にはまだ程遠い白いブーケに手を伸ばしていた。
「それで? 何か用事があったんじゃないの?」
本題を忘れていやしないかと尋ねた用件に、そうだったと笑う電話越しの声。まだ耄碌するには早すぎるだろうと催促する話題は、ただの事務連絡。要するに雑用の命令だった。
【昨夜連絡あったのをすっかり忘れててさ、届けものして欲しいんだ。隣に】
どうやら昨晩の真夜中に帰って来たらしい隣人は、まだ今回の詳しい企画書を受け取っていないのだとか。「ごめん」と申し訳なさそうに語るその声はすぐ様気を取り直し、手が空いたらでいいからと付け加えた。
【⋯⋯あ⋯⋯でも、もし嫌だったら帰ってから俺が行くけど⋯⋯】
「大丈夫、ありがとう。で、書類はどこにあるの?」
【俺の部屋のデスクの上。クライアントの方には俺から連絡しとくから。────⋯⋯ねぇ、絆利⋯⋯】
「何?」
【聞くなって言われたけど⋯⋯やっぱり気になってさ⋯⋯。その⋯⋯織部ってアシスタントに会ってから、何か様子がおかしいっていうか、辛そうに感じて。本当に大丈夫? 無理してない?】
「それで? 何か用事があったんじゃないの?」
本題を忘れていやしないかと尋ねた用件に、そうだったと笑う電話越しの声。まだ耄碌するには早すぎるだろうと催促する話題は、ただの事務連絡。要するに雑用の命令だった。
【昨夜連絡あったのをすっかり忘れててさ、届けものして欲しいんだ。隣に】
どうやら昨晩の真夜中に帰って来たらしい隣人は、まだ今回の詳しい企画書を受け取っていないのだとか。「ごめん」と申し訳なさそうに語るその声はすぐ様気を取り直し、手が空いたらでいいからと付け加えた。
【⋯⋯あ⋯⋯でも、もし嫌だったら帰ってから俺が行くけど⋯⋯】
「大丈夫、ありがとう。で、書類はどこにあるの?」
【俺の部屋のデスクの上。クライアントの方には俺から連絡しとくから。────⋯⋯ねぇ、絆利⋯⋯】
「何?」
【聞くなって言われたけど⋯⋯やっぱり気になってさ⋯⋯。その⋯⋯織部ってアシスタントに会ってから、何か様子がおかしいっていうか、辛そうに感じて。本当に大丈夫? 無理してない?】