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 翌朝、居残り指名された私は、午前中から細かい作業に没頭していた。おそらく、ウェディングブーケをイメージしたであろうピアスのデザインは、つまみ細工で表現するにはなかなか大変で。白を基調とした色合いなため、先程から白いちりめん生地ばかりをつまんでは折り、つまんでは折り⋯⋯と、小さな花びらを延々と作り続けていたのだ。そして、あーでもない、こーでもないと自問自答しながら段々と仕上がってくる小さなブーケに、半日などあっという間に過ぎていった。

 下の共同リビングで一人根詰めること四時間あまり。費やす集中力もなくなり、気分転換にとテラスへ出る。気象庁から発表された梅雨明けは花洛よりも早く、真上に登る太陽が夏も盛りとばかりにギラギラと輝いていた。

 少しの休憩だと凭れる手摺りは、燦々と降り注ぐ日差しのせいで長くは触れていられないほど焼けている。寒さにはある程度耐えられるがこの蒸し暑さは別格だと、逃げるよう早々と引っ込む屋内は、効きすぎるほどのエアコンのおかげでまさに天国だった。