【初日はどうだった?】

「最悪よ! 誰に会ったと思う!?」

【どうしたの?】

「千知と沙帆。それも二人揃って」

【ウッソ!? マジで!!】

 あまりにもの大きな悲鳴に思わずスマホを耳から遠ざける。

 眠る前にかかってきた碧子からの電話。愚痴るだけ愚痴って、吐き出したストレスをそのまま碧子にぶつけてしまう。「ごめんね」と謝る私に彼女は「いくらでも聞くよ」と笑ってくれた。

 今日一日のうちで起こったアクシデントに気分はお腹いっぱいで、もっと話したいこと、聞いてもらいたいことは山ほどあった。けれど今は睡魔に抗うことはできなくて。人は眠気には勝てない。互いが「おやすみ」と言い合い電話を切る。耳元に当てるスマホが重力に負け手から滑り落ちると同時に、この意識は遠退いていった。