飛行機の中で確認したそれはどれも見事で、制作にもそれなりに時間を必要とされそうなものばかり。懸念していた「もし」の事態が起こり、結局はそのファイルが意味を成すこととなってしまったのだ。

「お前ら⋯⋯相変わらずだな」

 私とあかりの板挟みにだけはなりたくないと、飲み干したビールの空き缶を手に席を立つ透吾。そんな彼の行動に「俺も」と、空になったとアピールする伊織は「だったら、絆利の変わりがお前にできるのか?」とあかりを横目で見ていた。

「またそうやって、この人の肩を持つ。そんなに私が気に入らないわけ?」

「論点ズレてるだろ?」

「納得してないだけよ!」

「だから、何をだよ!?」

 あれよあれよという間に仕事の話は道を逸れ、辿り着いた先は元恋人同士の痴話喧嘩。どうしたものかと、伊織の前にビールを差し出す透吾の様子を窺いながら、酔えないチューハイをグラスに半分ほど一気に飲み干した。

「お前らなぁ、喧嘩するなら他所でやれ」

 居心地悪いと開けたプルタブから勢いよく吹き出してくる圧縮された空気は、ピンと張り詰めたその場でやけにうるさく聞こえた。

 それからは皆、ほぼ無言。

 さすがは年長者。透吾の一言が効いたらしく、それなりのディナーは殺伐とした雰囲気のまま、料理が美味しかったという記憶だけ残しその日を終えた。