「明日は俺と透吾さんは現場で、絆利はつまみ細工の予定。あかり、お前はどうする?」

「どうする? って?」

「絆利にはここに残ってもらわないと、作るのは簪だけじゃないから。とりあえず今は、手元にあるデザイン画を元に簪とピアス作りから始めてもらえたらいいんだけど。あかりは今回ショーのモデルも頼まれてるだろ?」

「あぁ、そうだったね。なら、私は二人について行く。お留守番は絆利さんだけで充分なんじゃない? 打ち合わせも延期でやることなくなっちゃったでしょ? 小物作りでもしてた方が、私たちも仕事しやすいから」

 電話番でもしてろと言いたげに、相変わらず刺々しさでこちらを威嚇する。そんな彼女にこちらも負けじと、「言われなくても、そのつもりだった」と野菜サラダの隅突っつく。最後に残しておいたプチトマトを頬張った後、手にしていたフォークを置いた。

 確かに今日の打ち合わせは頓挫してしまったが、やることがなくなったわけではない。朝、会社を出る直前に駆け寄ってきた社長から受け取ったA四の黒いファイル。まだ確定されていない私の予定は未定で、もし今日ミーティングの時間が取れなければ、このデザインから制作し始めて欲しいと言付かったのだとか。