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「疲れた⋯⋯」

 戻るなりそのまま自身の部屋に直行。気をまぎらすようデスクに並べたのは一冊のスケッチブックと筆箱だった。気が沈んだ時は好きなことをしてテンションを上げる────それが私なりのモチベーションの保ち方だったから。それから辺りが暗くなるまで自室に籠ったまま、無我夢中でデザイン画を描き続けていた。

「もうこんな時間⋯⋯」

 綺麗にベッドメイクされていたそこにうつ伏せで寝転び、さすがに集中力尽きたと顔だけを上げる。サイドテーブルに用意されていたデジタル時計が、もうすぐ十九時を教えてくれていた。

 それぞれの部屋には各々バスルームまで完備されており、わざわざ下の共同スペースまで降りて行かなくても事足りる。今日は大した仕事もしていないのに疲労困憊なのは、現地に着いたばかりで起こったあのアクシデントに加えて現れた『あの女』せい。思い出すだけでストレスが溜まるその顔を脳裏から消し去るようタオルで頭をわしゃわしゃと掻き乱す。洗いざらした髪を放り出すよう仰向けになり大きく息を吐いた。