そう綺麗な笑みを浮かべる。まるで勝ち誇ったように。

「好きだったんでしょ? 彼のこと。振り向いて貰えなくて残念ね。まっ、当然だけど」

「別に、何も期待してなんかいなかったし」

「在り来りな負け惜しみ。まだ可能性があるとか思ってたら可哀想だから教えてあげる。言い寄って来たのは千知の方よ。最初は私だってその気はなかったし、特に意識もしてなかったから。でもお互い惹かれあっちゃったの⋯⋯仕方ないでしょ?」

 男と女だから────と。

 この不毛な会話、一体いつまで続けるつもりか? 友達だと思っていた頃には思ってもいなかった彼女の本性。あの頃はどちらかというと大人しめで可愛らしい印象だったが、どうやらかなり分厚い仮面を被っていたようだ。もしかしたら、私と仲良くなったのもただ単に千知に近づきたいだけだったからなのかもしれない。

「話ってそれだけ?」

 これ以上内容のない会話はしたくない。ただ疲労が蓄積されるだけだ。「それだけよ」と言いたいことは吐き出したらしい彼女はあくまで強気で。そんな態度に殊更増す疲れは精神的ダメージにもなり得るから、そのまま何も言わず踵を返した。

 かつての友人は、驚くほど嫌な女になっていたのは言うまでもない。いや────あれが本来の彼女なのだ。