「信じたい」「信じてる」────その言葉はどちらも、自分の中にいる理想の彼を追い求めたもの。

 基本塩対応の千知だけれど、困っている人は放っておけないタイプの人間で。その面倒見の良さから、二人の関係が遠目に見ても親しくなっていくように感じていたのだ。けれど私にはそれを突き詰める勇気などなく、『織部紗帆』の名前にだけは以上な反応を見せてしまう私は、ここ最近疑心暗鬼な日々を送っていた。

 本日何度目かも分からないため息を吐くと、碧子に軽く睨まれる。

「あのねぇ、さっきから何なのよ? ため息をばっかり」

 話してみなさいよとせっつかれ「うーん」と唸る。あんたの悩み事なんか容易に察しがつくと笑う彼女は、小バカにした態度で笑った。

「何か、面白がってる?」

「だって面白いんだもん」

「サイテー」

「だったらウジウジしてないで、本人に直接聞けばいいじゃない! 今のところまだ『友達』でしょ?」

「だからこそ、そんなこと出来るわけないでしょ?」

 碧子らしい男前なアドバイスだが、私には無謀な挑戦に他ならない。あたって砕けろと言っているようなものだ。