「────⋯⋯っ、沙帆⋯⋯!」
気づけば声に出していた名前に、目の前のマダムは少々驚き、私が呼んだ相手も「何であんたがここにいるんだ」とでも言いたげな表情をしていた。
それもそのはず、目が合ったその相手は、私の失恋を決定的した存在────「織部沙帆」だったのだ。
「絆利、久しぶりね。元気してた? あなたも碧子もいきなり連絡取れなくなっちゃったから、心配してたのよ」
ここまで来れば、逆に笑えるようだ。
「奥様、この方は千知さんの"ただの"ご友人で、彼が以前勤めていた事務所の近くにある“お弁当屋さん”で働いていらっしゃった伏見絆利さんです。今は転職されて、『つまみ細工職人』になられているとか。そうよね?」
「何で、それを⋯⋯────」
と発した瞬間、色々納得した。
まず、今現在の状況を整理すると────目の前にいるエレガントな女性は彼の母親で、その女性と肩を並べている女────沙帆はその母親のお気に入りか何か。千知が「婚約者」や「結婚」と言っていたところから、その相手はきっと沙帆のことなのだろうと推測できた。
気づけば声に出していた名前に、目の前のマダムは少々驚き、私が呼んだ相手も「何であんたがここにいるんだ」とでも言いたげな表情をしていた。
それもそのはず、目が合ったその相手は、私の失恋を決定的した存在────「織部沙帆」だったのだ。
「絆利、久しぶりね。元気してた? あなたも碧子もいきなり連絡取れなくなっちゃったから、心配してたのよ」
ここまで来れば、逆に笑えるようだ。
「奥様、この方は千知さんの"ただの"ご友人で、彼が以前勤めていた事務所の近くにある“お弁当屋さん”で働いていらっしゃった伏見絆利さんです。今は転職されて、『つまみ細工職人』になられているとか。そうよね?」
「何で、それを⋯⋯────」
と発した瞬間、色々納得した。
まず、今現在の状況を整理すると────目の前にいるエレガントな女性は彼の母親で、その女性と肩を並べている女────沙帆はその母親のお気に入りか何か。千知が「婚約者」や「結婚」と言っていたところから、その相手はきっと沙帆のことなのだろうと推測できた。