「というわけで、皆には今日からでも現地に飛んで欲しいんだがなぁ」

「善は急げってことか」と鼻で笑う伊織も、兄の無茶ぶりにどこか呆れ顔。だからってルームシェア生活なんて、例え三泊四日でもこのメンツでは精神的に持たないと思った。

「それがさぁ、お前ら特別待遇だぞ! 宿泊先は心配どころか、豪華なコテージだってんだから。向こうが色々手配してくれるって言うからお願いしてたんだけど、まさか一軒まるまる、それも格安で貸してくれるっていうんだからな」

「今からでも現地に飛んでくれ」と私たちを急かす社長に、もう納得せざるおえないこの状況。理解はしているが、不満はそれなりに。突然すぎると文句の止まらないイケメン二人がウダウダと意見するものだから、「ごちゃごちゃうるさい!」と堪らず声を上げたボスは、社長命令だと珍しく権力を振りかざし二人を無理やりねじ伏せた。

 何やかんやと揉める彼らを尻目に長い巻き髪をかき揚げるあかりは、私と同じく深いため息を吐きながら無言のまま頬杖をつく。

 各々反応は違えど、皆、完全には納得していない様子。しかし社長は「合宿だと思って楽しんでこいよ」と、またも大口を開けて笑う始末。ならば事は最悪だと、タイムリーな話題を共有している男女二人を視界に、これから先が気まづいったらありゃしない。

 それに加えて、突然降って湧いたように現れた失恋相手の存在。

 何事も起きなければ幸いだと、それでも身構えずにはいられない我が心理。どうか平穏無事に全てが滞りなく済むことを切に願っていた。