「あと──」と続く接続詞に顔を上げれば、目が合ったその人は私をアルバイトに呼んだのには他にも理由があると打ち明けた。

「今回のサマーコレクションを主催してるのが『聚楽(じゅらく)──Juraku──』ってブランドなんだが、そこからの要請なんだよ。ショーに使用するつまみ細工を『伏見絆利』に全て任せたいって」

「⋯⋯え? は? 何で?」

 口をついて出るのは、一音の感嘆詞のみ。

 確か今、自身が来ている浴衣のブランド名が『聚楽── Juraku ──』だったような。そんなに有名なのか? と思いながらも、そのまま話を進めようとする時成さんに待ったをかけ事の経緯を問うた。

「俺もそこら辺は詳しくは聞いてないんだが、向こう側は最初っからお前の名前知ってたぞ」

「だから何で? どんな人なんですか?」

「元々は大手のデザイン事務所に在籍してたらしいが、一年ほど前に独立して自分のブランドを立ち上げたんだと。デザイナーの名前は確か⋯⋯────『高村千知』だったかな? 電話やメールでのやり取りは何度かしたが、俺もまだ本人には会ってないんだ」

「高村⋯⋯千知⋯⋯────」

 それはまるで雷にでも打たれたような感覚だった。