どことなくお疲れ気味でもあろう社長が途端に軽く息を吐き肩を落とすと、「お疲れさん」とさも他人事のように声を掛ける透吾。ここまで来ればこの会社に暇を感じる人間はいないと言う彼に「お前はいいよな」とボヤくボスは、これから皆同じ目にあうんだと不敵な笑みを湛えていた。

「────それで、今しがた大凡の企画が上がってきたのはいいんだけれども、クライアント側の事情でまだ花洛に来られないって言うんだ。ならばこちらが伺うということでスケジュール調整をな⋯⋯。こっちの都合もあるんで」

 社長の企画説明を聞きながらも、事実内容は半分ほどしか頭に入ってきていない。展示会という慣れない仕事のお陰で最近続いた寝不足のせいか、さっきから止まらない欠伸を必死で堪えていた。

「今回のイベントはイオと透吾に全て任せる。あかりと絆利も二人の力になってやってくれ」

 言われ資料を捲りながら、いつものことだと二度頷き納得。しかし今回に限っては、私の役目はそれだけではなかったようだ。