「急に決まったんで、俺もバタバタしてるとこなんだけど⋯⋯」

 言いながら手持ちの資料をこちらに配る。手渡されたそれには企画書と銘打って『新作着物&浴衣サマーコレクションについて』という簡単なタイトルと、細かい活字がそのA4用紙を埋め尽くしていた。

「悪いが、皆には二、三日花洛を離れてもらう。早い話が、短期間の出張だ」

「はぁ?」

「この四人で!?」

「何それ?」と伊織と透吾の後に続いて声を上げたのはあかり。「とは言っても、要するに、三泊四日のお泊まりだ」と説明する社長は驚かせて悪いと頭をかく。

 取り敢えず言いたいことは言われてしまったので、私は事の成り行きを見守ることにした。

「どこもそうなんだろうが、今やどの業界もお客の取り合いなんだ。お陰様でうちは何とかやってはいけているが、いつどこで寝首を掻かれるか分かったもんじゃないからな。依頼された仕事は断らないってのが、俺の信条なんだが⋯⋯そのせいで、人手が足りなくなっちまってなぁ。今回も少数精鋭で頼むよ」

 もうスケジュールはパンパンだと言いながら、ハッハッハと大口を開けて笑う。ある意味会社にとっては嬉しい悲鳴であろうが、忙し過ぎるのもどうかと思う。